今回の解読のテーマは、急成長を遂げている女性専用フィット
ネスクラブ「カーブス」です。
常識を覆したモデル
固定課金の場合、資産価値の高いもの、つまり自分では所有
できない高額なものほど利用の権利を使ったストックビジネス
が作りやすいものですが、このカーブスのモデルはその古い
考えを覆し誰もが成功しないだろうと思う中で成功しました。
ここにはメンバーシップエコノミーの要素を活かした好例なので
取り上げます。
日本のカーブスは2005年の日本上陸以来、2015年
店舗数1,648店舗 会員数730,000名とう成長を遂げている。
今回はFC本部の側面はやりません。(FCビジネスのストック
性はまた別の機会に)今回の解読は収益ユニットである店舗の
ストックビジネス性についてやってみます。
今までのフィットネスクラブと言えば大型施設が当たりまえ、
「スポーツクラブ型」というビジネスモデルは施設の機材数
と会員数の倍数が大きいほうが利益効率が高くなります。
会員が同時に来ることは無いという前提のモデルだからです
カーブスはよく混んでいて使えないというクチコミも
ありますが、小規模なら瞬間的に混雑は起こりやすいので
これは小規模施設の宿命です。
ではなぜこのようなスモールモデルになったのか、コンセプト
に理由がありました。
カーブスに込められた創始者ゲイリー・ヘブンの想い。
彼は母親(40歳)を突然亡くしています。死因は、
高血圧とうつ病。肥満も関係していました。
「私のように、幼くして母をなくす子供をつくりたくない」
という気持ちが芽生え、今に至ります。
母の死をきっかけに、彼は医学部に入学しますが、医療だけ
では母のような人を救えないと気づき、医学部を中退し、
運動と栄養の博士号を取得します。
2度の大きな失敗
彼は大きな失敗を2度しています。
一度目は従来型のフィットネスクラブ、その後、
懲りずに女性向けの大型フィットネスクラブをオープン
しましたが、彼のクラブに来るのは、若くて運動
の出来る方ばかり、母親のような人は着ませんでした
結果的にこれも失敗します。
普通、同じ分野のビジネスで二度も失敗すれば、諦めますが
しかし、彼は、あきらめませんでした。
どうしたら、母のような年代の、運動が苦手で、体にコンプレ
ックスを持つ女性が来てくれるのか?
「初めは、誰もがそんなニッチ分野はビジネスに
ならないと言ったよ。年配の女性はいろいろと要求
がうるさくて、相手にするのが大変だってね」
「でも、僕らには確信があった。人が不満に思っている
ことにこそ、事業機会は隠れているものなんだ」
(「シニアビジネス」より抜粋)
そして、今までの常識を覆すフィットネスクラブ
”カーブス”を誕生させたそうです。
カーブスの特徴
カーブスのモットーは「ノーメン、ノーメーキャップ、ノーミラー」
「気負わず、生活の中に無理なく運動を取り入れる」という考え
実際に会員さんに通ってもらうための3つの理由を挙げています。
1 運動すること
2 スタッフに会いにきてもらう
3 友達に会いにきてもらう
カーブスは、独自のプログラムでトレーニングをします。
簡単にシステムを紹介すると、部屋の中に12台のマシンとステップ
ボードが交互に丸く並んでいます。上半身の筋トレ、ステップボード
で筋肉を休める、下半身の筋トレ、ステップボードで筋肉を休める
……という流れでリズムに乗って体を動かし、円を2周した後、スト
レッチをします。1回30分でワンセット、これで1日のプログラムは
終了です。
設備を簡単にして運動も30分で終わる手軽さ、筋力トレーニングと、
有酸素運動とストレッチを繰り返すことで負担なく基礎代謝をあげて行く。
ゲイリー・ヘブンは中年以上の女性のニーズに合わせた
チューニングを徹底的に行っています。
ストックビジネスを作る手順で解読
ストックビジネスを作る流れに沿ってこの事業を解読して行きます。
まず、
この会社の立ち位置は「コンテンツ製作者」
そして、ストックビジネスの要点、4つのカテゴリー
今回は1、3項目目の「借りる」と「改善する」です。
この二つがあるというのはストックにしやすいはず。
利点は「基礎代謝が改善して健康になる」なのですが
特筆すべき利点がもう一つ
「その年代の求めるコミュニティーがある」です
スタッフからの声掛けは下の名前で「〇〇さん」と呼んでいます。
女性だと「〇〇さんの奥さん」とか「〇〇のママ」とか立場で
呼ばれることからの開放をしてあげる。休んだりすると電話が
掛かってきたりするけれどこれも高齢者にとってはとても刺激
になる。
型は、「スポーツ施設型」
課金タイプは「固定課金」です。
こうするとコンセプトの構成全体が見えてきたと思います。
これをワークシートにいれて、強みと長期的視点をいれれば
このストックビジネスのコンセプトが完成です。
従来スポーツクラブ型はモデルが確立されていましたが
近年はコミュニティー作りの優劣が重要になっていて
従来の機能性+メンバーシップエコノミーの要素が
このストックビジネスの成功の鍵といえます。
3月16日開講のプロフェッショナルゼミでは、メンバーシップ
エコノミーがストックビジネスに及ぼす効果も学びます。
【プロフェッショナルゼミの全容】 ※終了しました。
ストックビジネスを学んでみたい!という方は、
こちらをご覧ください。
最後に、日本独特の特殊事情も出てきました。
この日経新聞の記事をご覧下さい。
過疎地の健康増進に町がカーブスに加盟。
これには創始者ゲイリー・ヘブンもさぞ驚いたことでしょう。
【日経新聞 2015/3/12 】
「カーブスジャパン(東京・港)は過疎地の自治体と連携し、
新規出店する。鳥取県大山町の事業の一環として今秋、町内に
開業する。町の保健師による町民への紹介などを通じて、
会員を増やす。同町の分庁舎を借りて、「カーブス大山町健康
センター」の名称で開業する。近くに町役場やスーパーがある
中心地にあり、同町は家賃の補助を検討する。数人のインス
トラクターを地元で雇用する。」
日経新聞リンク
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO84263170R10C15A3LC0000/