ここでは、サブスクリプションによるサービスやストックビジネスの作り方についてご説明します。
「サブスクとストックビジネス事例を徹底解読【16選】」では、【スポーツクラブ型】のようなリアルに人が集まる場所があるビジネスから、「ネットフリックス」や「アドビ」のように【ASP(Application Service Provider)型】のオンラインで完結するものまで、様々な業界、事業形態も異なるサブスクとストックビジネスの事例を解読してきました。
また、同じ【ASP型】でも、ネットフリックは消費者向けの娯楽サービスであり、アドビは主にクリエイターやデザイナーといわれるプロ向けで仕事道具ともいえるサービスと、対象とする人もその目的も大きく異なっています。
けれども、業界や事業形態、提供する対象も全く違うサブスクやストックビジネスの事例を解読することで成功のカギがみえてきます。
それらのポイントを踏まえながら、現在の事業をサブスクサービスやストックビジネスに転換するための考え方、新規事業としてストックビジネスを構築するうえで、気をつけるべき注意点などを紹介していきます。
◆目次◆
サブスクとストックビジネスの可能性を探る―未活用資産という「ストックの種」を探す
ストックビジネスには、貸す・認める・改善する・消費劣化の4つの分類がある
フロービジネスとストックビジネスとの比較 ~サブスクサービスのメリット
サブスクサービスやストックビジネス作るには、ブルーオーシャンとレッドオーシャンのどちら
サブスクリプション額の価格決定とストックビジネスの収益ユニット
サブスクとストックビジネスの可能性を探る―未活用資産という「ストックの種」を探す
サブスクによるサービスやストックビジネスを始めようと思ったとき、最初にすべきなのは、ストックビジネスの種をみつけること。具体的なアクションとしては「捨てているものはないか?」「余っているものはないか?」と考えることです。
この余っているものを探すことをストックビジネスアカデミーでは【アイドルを探せ!】と呼んでいます。アイドルといっても歌って踊れる人気者のことではありません。ここでいうアイドルは自動車のアイドリングのほうのアイドル。すなわちエンジンは動いていても、走ることに力をつかっていない「余力」のことであり、いうなれば無駄になっているものを社会全体や会社のなかで探してみようという考え方であり、ストックの種をみつけるための秘密のノウハウです。
余っているものの活かし方が分かりやすいように、ストックビジネスアカデミー実践企業インタビュー「Vol.33提供者、利用者、運営者全員が納得する、三方良し型ストックビジネスの事例」で解読したKCC株式会社の事例をご紹介します。
KCC株式会社は、名古屋を起点に貸し会議室ビジネス『日本会議室』を運営。どんなに人気の貸し会議室でも空き時間が発生してしまいます。KCCは、この未活用資産ともいえるアイドルを活用して『PFO(Personal Free Office)』というサービスを始めました。具体的には、外回りの営業やいわゆるノマドワーカーに月額のサブスクリプションで予約が入っていない貸し会議室の空き時間をアプリひとつで貸し出す仕組みです。
当時、ノマドワークに必要な電源や無線LAN設備があるカフェなどが徐々に増えてきてはいました。ただ、通話してはいけない場所が多く、当然オンライン会議も禁止。出先でオンライン商談や会議に参加することは困難な状況でした。
この解決を目指したのがKCC社のパーソナル・フリー・オフィス、『PFO』です。まさに、貸し会議室の空き時間というアイドルを外出先で仕事をする人に月額のサブスクで貸し出したのです。これが未活用資産というアイドルから、サブスクリプションという仕組みを使って、月額固定で収益をあげるストックビジネスを作りあげた成功事例です。
サブスクサービスやストックビジネスを作るうえで大切なのは、まず、アイドルを探し、そのアイドルから生み出せるサービスを考える。そして、そのサービスに継続的な価値を感じてくれる需要層にサービスを提供する。これを月額課金というサブスクの仕組みで提供することによってストックビジネスが完成するという流れ、この順番を守ることが大事なのです。
この順序に基づいて、サブスクサービスとストックビジネスの作り方について、詳しく解説してきます。
ストックビジネスには、貸す・認める・改善する・消費劣化の4つの分類がある
「アイドルを探して、ストックビジネスになりそうな事業を考えろ」といわれても、そんな簡単にはできないと思われた方もいらっしゃるかもしれません。
そんなときは、まず自社の事業、ご自身が提供しているサービスを【貸す】【認める】【改善する】【消費劣化】という4つに分類してみることをお勧めします。
ご自身の事業が「顧客に何かを貸している」のであれば【貸す】。フランチャイズや代理店ビジネスのように「何かの事業をやるための権利や仕組、材料を提供している」のであれば【認める】。「知識や技能の提供や痛みの解消」などであれば【改善】。いわゆる消耗品の販売や一時的なサービス提供であれば【消費劣化】という具合です。
この4つの分類を、「ストックビジネスの強度」といいますが【貸す】が一番強く、【消費劣化】に向かうほど弱くなっていきます。こうして自社の事業を分類することで、強度が強い順にストック化できないか…と考えていくという運びです。
【貸す】は、事例紹介16選で、ご紹介した自社ソフトを提供している『アドビ』や、賃貸マンションオーナーのところに毎月家賃収入が入ってくることなどをイメージすると分かりやすいかもしれません。当たり前といえばそうですが、自分が持っているものを【貸している状態】が一番強固なストックビジネスになるということです。利用者は、お金を支払わなければソフトを使えかったり部屋に住めなかったりするわけですから、そう簡単に解約はできず、当然継続率が高いストックビジネスとなるわけです。
次の【認める】は、フランチャイズをイメージすると分かりやすいでしょう。自社の事業のやり方をノウハウとして提供したり、資格を与えたりすることで、サブスク収入が入ってくればストックビジネスになります。
ただ、フランチャイズに加盟してやり方を学んだ事業者が次々に独立してしまってはストックビジネスにはなりません。これが【貸す】に比較して【認める】のストック強度が一段階下がる理由でもあります。
実務的には「ラーメンチェーンの秘伝のタレ」のうように必要な材料提供、契約において同業禁止条項を設けるなどの対策をすれば十分ですが、自社だけで事業運営するのは違った管理システムやマネジメント思考、誰でもできるノウハウを確立して、マニュアルなどの整備や様々な準備が必要であることはいうまでもありません。
その次の【改善する】は、学習塾の事例でご説明しましょう。学習塾や予備校が改善しているのは学力。学校の成績やテスト結果といってもいいかもしれませんが、ズバリこの「改善するビジネスの弱みは《卒業》があるということ」です。これは高校受験を目指していた中学生が進学とともに学習塾を卒業するという意味合いのほかに、成績がよくなったから塾に通う必要がなくなって「卒塾」してしまうという意味も含めての卒業があるということです。
このように【改善する】は、卒業という弱点ゆえにストックビジネスの強度が下がる宿命をもっています。昨今、少子化が問題にはなりながらも学習塾のように毎年新しい学年が自動的に生まれてくる事業ならまだよいほうで、企業向けの場合、コンサルタントが依頼をされていた問題を解決してしまえばお役御免で契約終了という名の卒業。ダイエット希望者も痩せてしまえばエステサロンやスポーツクラブを卒業していってしまいます。
もちろん、学力向上や企業の問題解決、痩身を成し遂げたことはサービス提供者としてとても喜ばしい結果といえます。けれども、ストックビジネス的な観点で考えるならば、塾なら大学受験コース、企業向けならば安価でも継続的な顧問コース、ダイエット後の美容コースへとつなげるなど、次なるサブスクリプションサービスを用意しておけば立派なストックビジネスになります。
最後の【消費劣化】は、お花業界の事例をみていきましょう。「母の日」のカーネーションのような“ほぼストックビジネス”ともいえる安定的な需要はありますが、ほとんどがフローなビジネスといえます。
事例紹介16選をご覧になった方は、お気づきかもしれませんが、花の宅配『BloomeeLife』は、【消費劣化】の世界で、出荷基準を満たしていない捨てられている花。すなわち生産現場と流通市場のアイドルから、サブスクリプションサービスを作り出してストックビジネスを構築しました。
それに必要だったのは、これまでよりもお花から茎にかけての長さが短くてよいという「新たな基準」とポストに入る「専用容器」。そして、簡単に注文ができるようにするための「アプリ」開発でした。
ここまで、【貸す】【認める】【改善する】【消費劣化】という4つに分類で、サブスクリプションやストックビジネスを考える方法をお伝えしましたが、如何でしたか?
ストックビジネスアカデミーでは、この4つの分類をもとに考えるためのフレームワークとして『ストックビジネス<リノベーションシート>』を無料で提供しています。
ご興味ある方は、コチラからダウンロードください。
▼ストックビジネスアカデミー「ワークシート」ダウンロード
※『ストックビジネス<リノベーションシート>』の詳しい使い方は「ストックビジネスの教科書」「ストックビジネスの教科書 プロフェショナル」をご覧ください。
フロービジネスとストックビジネスとの比較 ~サブスクサービスのメリット
サブスクリプションによるサービスやストックビジネスを作るうえで、対極ともいえるフロービジネスと比較して、その違いをみていきます。
@大橋さん↓こちらの罫線を削除したし!です
取引 | 単発 | 定期/継続 |
売上 | 不安定 | 安定 |
顧客 | 単発/短期 | 長期 |
業態 | 小売/飲食/催事 | 賃貸/保険/インフラ/学校/ASP※ |
※ASP【Application Service Provider】WEB経由でソフトウェアを提供するサービス
フロービジネスは、小売や飲食、イベントなどに代表される1回1回の取引が基本となる単発型事業モデルです。顧客との関係性も、その場限りの単発・短期型となるため必然的に売上は不安定になります。
一方、サブスクサービスやストックビジネスの場合は、定期的な契約が前提となるため継続的な取引となり安定した売上が見込め、顧客との関係性も長期的なものになります。
フロービジネスは、短期間で収益をあげられるというメリットがありますが、毎月ゼロから売上をあげる必要があります。これが月初から一定の売上が確保されているサブスクサービスやストックビジネスとの大きな違いで、この相違が経営者や事業責任者の心理的な負担を軽減し、安心を生む効果につながっています。
サブスクサービスやストックビジネス作るには、ブルーオーシャンとレッドオーシャンのどちらを狙うべきか?
新規事業を考える際、競合がいるレッドオーシャンではなく、市場を独占できるブルーオーシャンを狙えなどとよくいわれています。【事例紹介16選】で、ご紹介した『カーブス』も、その好事例として紹介されることが多いブルーオーシャンのストックビジネスです。
ただ、これは現実的には難しいことでありブルーオーシャンには競合だけではなく、顧客自体もいないというリスクがあります。かたや、レッドオーシャンには競争もありますが、確実ともいえる需要がそこに存在しています。
例えばスーパーマーケットやドラッグストアでは、店頭にペットボトルに入った水が並べられブランドや価格競争が繰り広げられています。これは水に対する確かな需要の証です。水のような生活必需品は、一定のサイクルで購入されているので、小売店にとってはある程度毎月の売上額が見込める“ほぼストックビジネス”という状態といってもいいかもしれませんが、あくまでもフロービジネスです。
ですが、同じ水の購入でもネット通販などによる定期便の利用、宅配便事業者が行っている定期購入では、支払いはサブスクリプションとなりストックビジネスの要素が強くなります。
さらに、水が入った大きなボトルを家に届けるウォーターサーバーになると、完全にサブスクサービスによるストックビジネスといえるでしょう。
このように、水の市場はブルーオーシャンとはかけ離れた明らかなレッドオーシャンです。ただし、ネット通販や宅配業者による定期購入、ウォーターサーバーのようなストックビジネスが存在しています。逆にいえば競合ひしめくレッドウォーシャンだからこそ、その大きな需要を基盤にサブスクリプションサービスが可能になるともいえます。このような飽和状態ともいえる市場でも「水を届ける方法」によって、ストックビジネスを構築することは可能です。
最近では、スーパーマーケットでもネットスーパーや店頭で買い物したモノをあとで自宅に届けてくれるサービスなどもてきています。当然、買い物の履歴はデータとして蓄積されており、水の在庫がなくなりそうな顧客に対しては、「そろそろ、お水は如何ですか」というリマインド、お勧め商品のレコメンド機能とともにクーポンが表示されるような仕組みが構築されています。
こうなると、サブスク的な契約がない小売事業ながらも「ほぼストックビジネス」といってもよい状態になってきます。このことからも、小売業だからといってフロービジネスしかできないなどという自己を呪縛するような考え方をしてはいけないことがわかります。
当然、もともと店で水を買うことに抵抗や障害がない人は、定期購入やウォーターサーバーを契約することはありません。子育てをしている方や加齢によって重い荷物が運べないなどの事情や理由がある方々が、これらサブスクリプションサービスのターゲットになるわけですが、この本質的なニーズを満たし続けることが、サブスクサービスの解約を防ぐことになり、安定したストックビジネスの構築へとつながっていきます。
ストックビジネスとして安泰と思われたウォーターサーバービジネスも、ネットスーパーのような新たなサービスの登場により足元をすくわれる可能性があることを忘れてはいけません。様々な技術革新による新たな競合の登場によって、「スーパーならオムツと一緒に水も頼めるから…」という思わぬ解約のリスクがあるということを覚えておく必要があります。
サブスクリプション額の価格決定とストックビジネスの収益ユニット
価格決定、すなわち商品やサービスをいくらで提供するかという値決めについては、会社の規模、経営者や商品開発担当などそれぞれの立場に関わらず誰しもが悩むところです。特にサブスクで一定額を定期的に徴収していくことになるストックビジネスにとっては、一度価格を決めたら変更しづらい部分もあり、その悩みはさらに大きなものになります。
サブスクサービスやストックビジネスの月額などを決める際に大切なのは、事業として「損益を考慮して提供できる価格」と、お客様が商品やサービスに価値を感じて「この価格なら満足して毎月支払おう」という、継続してくれる値段とのバランスをとることです。
こうして導き出された価格で、毎月何人くらいの契約があり、どれくらいの継続率になるかを検討していきます。設備投資などの初期費用が必要な場合は、どれくらいの契約数を獲得すれば損益分岐点に到達するか。そして継続率がどれくらいならば、いつ頃達成できるのかというように検討をしていきます。
このようにサブスク金額が決まり、契約数やその増加率、継続率が安定して稼げるような状態を「ストックビジネスの収益ユニット」といいます。そしてこのユニットを次々と増やせるかによって、強固なストックビジネスを作りだせるかどうかが決まってきます。
サブスクサービスやストックビジネスにおける契約数や継続率などを使ってシミュレーションをしてみたいという方は、ストックビジネスアカデミーで提供しているフレームワーク『ストックビジネス<収益シミュレーター>』をお試しください。【無料】でダウンロードいただけます。
ご興味ある方は、コチラからダウンロードください。
▼ストックビジネスアカデミー「ワークシート」ダウンロード
※『ストックビジネス<収益シミュレーター>』の詳しい使い方は「ストックビジネスの教科書」「ストックビジネスの教科書 プロフェショナル」をご覧ください。
ストックビジネスのチューニングとサブスクサービスの成長プロセス
ストックビジネスは、創業期、拡大期、安定期、衰退期というプロセスで成長し衰退していきます。これは新築の賃貸マンションに入居者募集をする創業期から、実際に入居者が増えていく拡大期。その後、退去があってもすぐに入居が決まる、ほぼ満室経営という状態が続く安定期。やがて、ライフステージの変化や建物の老朽化とともに退去する人が増え、入居がままならなくなっていく衰退期のような流れをイメージするとわかりやすいかもしれません。
ストックビジネスの王道、4つの分類でも最高位の【貸す】に位置する不動産事業でさえも、いつかは衰退期を迎える時がきます。この成長から衰退のプロセスにおいて、より早くより広範囲で拡大させ、より長い期間の安定を実現することでできるのが「ストックビジネスのチューニング」という考え方です。
このチューニングは、一言でいうと「サービスや内容、価格も含めて改善を図る」ことです。ストックビジネスを拡大、安定的に成長させていくためには、このチューニング作業を継続的に実施する必要があります。
賃貸マンションならば、広告宣伝のターゲットや方法の変更。地域のニーズにあわせて建物のリノベーションをしたり、家賃の見直しを図ったりすることなどが考えられます。
このようにチューニングサイクルを回し続けることで、退去を減らし入居を促進することで、家賃というサブスクの継続率が高めストックビジネスをより長く強固に保つことができるようになっていきます。
チューニングサイクルを回してみたいという方は、ストックビジネスアカデミーで提供しているフレームワーク、「ストックビジネス<チューニングシート>」をお試しください。
【無料】でダウンロードいただけます。
ご興味ある方は、コチラからダウンロードください。
▼「ストックビジネス<チューニングシート>」ダウンロード
※『ストックビジネス<チューニングシート>』の詳しい使い方は「ストックビジネスの教科書 プロフェショナル」をご覧ください。
【注 意】「ストックビジネスの教科書」には、チューニングシートの説明はございません。