ストックビジネスの完成度=企業価値、という構造は
以前もお話ししましたが、2020年7月1日は世界に
衝撃が走った出来事があります。
「株式時価総額でテスラがトヨタを抜く」
(出典:日本経済新聞)
2019年3月にテスラは販売店を廃止し、一部はショールーム
として残すもののてネット販売に特化しました。
一定の走行距離など条件満たせば、返品も自由とのこと
その結果は、コロナ禍でロックダウンとなった英国の
4-5月の販売台数一位は大手を抑えてテスラでした。
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売れば売るほど強くなる仕組み
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先日、青山のテスラショールームで試乗してきました。
「この車は後でどんどん賢くなるんですよ。普通は古くなれば
また新車に変えますが、使われていないセンサーがあって
いずれアップデートされて自動運転にもなるんです云々・・・
中古でもいま一番値落ちしない云々・・・」
正直なところ、電気自動車ってバッテリーは古くなって
とか、今はいいけど将来はがっつり値下がりするんじゃ
ないのかなあ?
などと、勝手に今だけ人気かと思っていましたが、
この営業マンをみて将来価値で売るのは上手だなと感心したのと、
テスラCEOイーロンマスク氏の事業構築の発想力を
感じました。
テスラ車には沢山の使われていないセンサーが搭載されて
います。FSDと呼ばれる車載コンピューターは標準装備
(自動運転可能な頭脳)で、それらは近い将来
オンラインでアップデートされて運転支援の機能が
追加されるそうです。
すでに販売済みの100万台以上のテスラ車では精度向上の
ため、カメラやセンサーがデータを集めていますので、
売れば売るほど、実車から膨大なデータを収集できる構造
になっていて、まだテスト走行をしている自動運転メーカー
からは頭一つ抜け出ています。
そして、ここからがポイントです。
ソフトウエアのアップデートには十万単位もあれば、
自動運転機能を使う場合は月額1万円(市場予想)という
サブスク型だと発表しています。
将来価値を表す株式時価総額がトヨタを上回ったのは
この期待値が大きいとのことですが、ストック思考で
考えてみましょう。
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「売った後で稼ぐ」はストックビジネスの鍵
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日本を代表するトヨタは「カンバン方式」を武器に
コスト削減と品質向上で企業価値を上げて
きました。まだ世界の道路事情も悪かった時代には
まさに最強の武器でした。
日本の車検制度は、車というものが故障しやすい
ものだった1951年に発足していますが、この制度も
車メーカーとその関連部門に安定的な収益をもたらし
ました。(もちろん国も税収が・・・)
耐久消費財の代表格である車は「長期間利用する」もので
タイヤやオイルのような「消耗品」があり、車検制度
12ヶ月点検制度のような「メンテナンスコスト」がかかる
また、保険やローンのような金融事業も生み出します。
これら全てストックビジネスだということから
車産業がいかに巨大なストックビジネスかがわかります。
しかし、時代が変わり
車全体の品質が向上して、道路事情もよくなり
安全装置も格段に進化してくると、現行の車検制度
すら外国並みに緩めていいのではないかと思われる
状況です。
その中で、車メーカーの競争は厳しく、
売上高の約6割をサプライヤーへの支払いにあてて、
約2割が自社工場での生産活動。広告費などの
販売管理費などを差し引くと営業利益は1割弱
いわれます。実際には金融事業が重要な稼ぎに
なっているのが現実です。
テスラはこの構造自体を変えました。
ネット販売に特化して販管費を抑え、販売した後に
オートパイロットやFSDのソフトウエア使用料で稼ぐ。
テスラの発表では2025年にソフトウエア使用料が
売り上げの6%となり、なんと粗利では25%近くに
なります。
機械部品とは違って在庫も原料費もかからない
ソフトウエアは、一度作れば利益率を押し上げます。
アップルがPCやスマホを売って配信で稼ぐのと、
アマゾンプライムのソフト配信で稼ぐのと同じ構造
ですので、株価は車メーカーではなくGAFAに
近づいてもおかしくないのです。
(表出典:日経新聞)
車を売れば売るほど、世界で使われる車が増えれば
増えるほど、ソフトウエアの使用料が増えていく。
新車ではなくても車が使われている間は途切れない構造
これこそが今回の株式時価総額の評価につながったものと思われます。
あなたのビジネスでも「売った後に稼ぐ」ぜひ
そのヒントを探してみてください。