新型コロナがあっても新たな方法で乗り越えた
社会起業家がいます。
そのファンが自然に広がるユニークな経営スタイルからは
、一般企業がまだ見落としているストックビジネスへの
ヒントがあふれていました。
=============
ファンを増やす経営のコツ【前編】
=============
今回は、ストックビジネスアカデミーが刊行する
対談、実践企業インタビューから。
=============
そんなユニークな、胡蝶蘭ビジネスで【障害者雇用】
という社会課題の解決を目指しているNPO法人
AlonAlon(アロンアロン)」の那部智史代表との
インタビューから事業の継続的成長ポイントをお伝え
します。
社会福祉事業は儲からないという私のイメージは
覆えされました。
胡蝶蘭といえば、開店などの贈答花の定番品として
、私の本業である不動産業界でも欠かせない贈り物です。
胡蝶蘭は、時代の変遷に伴いリアル店舗の花屋さん
からインターネット上の花屋さんへと発注先が
変わるとともに、25,000~50,000円という価格帯
の胡蝶蘭をお贈りすることが多かったと記憶しています。
特殊なニッチ市場かもしれませんが、社会儀礼として
認知され、しかも花としては高価格帯の胡蝶蘭
マーケットには「不思議な商売だな」という
疑問もあり気になる存在でした。
◆400億まで育てた事業を棄ててゼロからの道を選んだ理由
大竹:那部代表、早速ですが、まずこの事業を始め
られたキッカケを教えてください。
那部:実は、一人息子が重度の知的障害を持って
産まれてきたんですね。
そんな中で、周囲から「可哀そう、可哀そう……」
と言われて、自分がうつ病気味になってしまいました。
大竹:そうだったんですね。
那部:そして、この苦しみから逃れるには、
どうしたら良いか? と考えて当時20代と若く
て、今思えば短絡的ですが「お金持ちになれば良い
、そうしたら羨ましがられる」という結論がでました(笑)
大竹:なるほど(笑)
那部:そこで、3人でネットベンチャーを起業。
時代も良かったんですが、売上400憶円・従業員
100名規模まで順調に事業を拡大して、40歳で
上場企業に売却しました。
大竹:そこまで順調な事業をどうして売却したんですか?
那部:息子が障害者であるということへの穴埋め
として贅沢をしていた面があって、そのことに
気づいて虚しくなったからですね。
40代になって、息子の障害がNGなわけではなく、
それに対応できていない社会がNGだと気づい
たら、会社が必要なくなっていたという感じです。
大竹:それから?
那部:売却益を原資に不動産業を本業として
1年取り組んで、家賃で食べていけるだけの収入
を確保しました。その後、ご存知の通り大家さん
はヒマですから「息子のような人をハッピーに
したい」と色々と考えはじめました。
◆ビジネスヒントに気づく
大竹:最初から胡蝶蘭をビジネスにしようと思っていたんですか?
那部:いいえ。
ベンチャー経営者時代のことですが、事業が順調に
拡大していったので、オフィスが大きくなるたびに
取引先から山のように胡蝶蘭が会社に届くという
実体験がありました。
大竹:分かります(笑)
那部:秘書がまとめた「○○会社様:□万円/
△△会社様:□万円」というリストが机にポンと
置いてあるんです。
大竹:それが、ビジネスのヒントに?
那部:はい、当然ながら相手先にお祝い事があれば、
頂戴した金額に見合った返礼をする……という
社会儀礼として循環する流れになっていますので、
この「往復ビンタ」みたいなビジネスに息子のような
障害者が関われれば良いなというイメージはありました。
一同:往復ビンタ!(笑)
那部:しかも、お祝い事ですから当然値引きも求めない。
胡蝶蘭が並んだ時に他社より貧相だと恥ずかしい
しいので、しっかり予算を掛けてより良いものを
贈る前提があるので価格競争に陥らない要素もある。
大竹:なるほど。
胡蝶蘭の栽培には、関りがあったんですか?
那部:いいえ、今でも栽培はできません!(笑)
◆最初の一歩、参入する市場を確かめる。
大竹:その状態でいきなり参入したんですか?
那部:いいえ、まずは、分自身も売ることが好き
なこともあって、大手電機会社の特例子会社で
軽度の障害者が生産していた胡蝶蘭を営業マン
として販売してみました。
大竹:確実な市場調査ですね。
那部:自分にノルマを課して年間5,000万円
販売したら自分たちで栽培しようと決めて頑張
りました。
大竹:どれくらい期間で達成したんですか?
那部:4年目で達成しました。
大竹:想像よりも長い時間をかけてマーケット
特性を見極めたんですね。
那部:売る出口が無ければ栽培しても意味が
ないと考えてましたね。
大竹:たしかにマーケットの中で自分の立ち位置
に確信がなく踏み出せばリスクが高いですが、
事業の組み立て方に経営センスを感じます。
那部:社会人になって営業職しか経験ありま
せんし、売ることが好きなんです。
◆ 障害者雇用の現実を知れ
大竹:事業を進めるうえで大切にしていることが
あれば教えてください。
那部:常に、「障害者の雇用を生む」ことを考えて
事業を進めていますね。
大竹:実は、お恥ずかしながら今まで障害者の雇用
状況について何も知りませんでした。
那部:「B型事業所」※と言われる施設の平均工賃は月額15,000円です。
「AlonAlon」ホームページより
(※B型事業所:障害や難病のある方のうち、年齢や
体力などの理由から、企業等で雇用契約を結んで働
くことが困難な方が、軽作業などの就労訓練を行う
ことができる福祉サービスを就労継続支援B型という
。雇用契約ではないため、賃金ではなく、生産物に
対する成果報酬の「工賃」が支払われる。)
大竹:社会起業家が注目を集めていますが、現実的
には多くの事業が赤字と聞きます、ビジネスと社会
貢献のバランスって難しいと思うんです。
本当にやりたいことや実現したい未来と事業とを
どのように均衡させて運営するか、考えは当初
からあったんですか?
那部:まず、社会課題の解決はビジネスのタネの
宝庫だと思っていますね。
数字的な面からお話ししますと全国で約11,000ヶ所
の事業所がありますが、うちの月額10万円という
工賃は全国トップクラスです。
大竹:すごいですね。
那部:そして、日本の胡蝶蘭市場は330憶円という
規模があります。
先程の工賃が月額15,000円というのも変ですし、
法定雇用率を守れている企業が半分以下という
こともどう考えてもおかしい。
B型事業所の雇用率1%も合わせて全て社会課題です。
そこで、これらの現実を変え理想に近づける
ために市場の何%を確保すれば良いのか?
とは考えました。
大竹:どれくらいになったんですか?
那部:市場の30%で、売上としては100憶円を目標としました。
胡蝶蘭の生産も販売もまったく素人だった那部代表が
、困難と思われた福祉事業の自立と持続化とそして
一般企業でさえ難しい成長を遂げたのか、
次回は、那部代表が打ち出す、ファンが増大する
驚愕の差別化戦略をお伝えします。
今日の内容が皆様の事業のヒントになれば幸いです。
ストックビジネス実践会は中小企業経営社が
ビジネスヒントを得るコミュニティーです。ご案内はこちら
3ヶ月ぶりに、
コロナで休止していた【無料相談ガイダンス】が復活
日時:7月21日 場所:池袋 定員10人
どなたでも参加できます。(SBA会員は何度でも参加可能)
お申し込みはこちらから
※短時間ですが、あなたのサービスのストック
ビジンレスの可能性を探ります。
大竹啓裕